妊娠・妊活中の甲状腺管理の決定版|2026年ATAガイドラインを専門医が解説|ひるま甲状腺クリニック 蒲田|東京都内、大田区蒲田駅の甲状腺専門診療|ひるま甲状腺クリニック蒲田

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妊娠・妊活中の甲状腺管理の決定版|2026年ATAガイドラインを専門医が解説

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2026年妊娠と甲状腺決定版

妊娠・妊活中の甲状腺管理の決定版|2026年ATAガイドラインを専門医が解説

妊娠を希望している方や妊娠中の方にとって、甲状腺ホルモンは赤ちゃんの健やかな成長に欠かせない重要なホルモンです。

甲状腺の異常は自覚症状が少ないことも多く、不妊治療や妊娠をきっかけに初めて見つかることも珍しくありません。

2026年6月、米国甲状腺学会(ATA)は妊娠・産前産後の甲状腺疾患に関するガイドラインを約9年ぶりに改訂しました。 本記事では、最新の考え方を踏まえながら、妊活前から妊娠中、産後までの甲状腺管理について、甲状腺専門医がわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • ・妊娠と甲状腺ホルモンの関係
  • ・妊活前に確認したい甲状腺検査
  • ・橋本病・バセドウ病と妊娠の注意点
  • ・妊娠中のTSH管理の考え方
  • ・産後甲状腺炎と産後うつの違い
  • ・妊娠中のヨウ素摂取の注意点

なぜ妊娠と甲状腺は関係があるのでしょうか?

甲状腺は首の前にある小さな臓器ですが、全身の代謝や成長を調整する甲状腺ホルモンを作っています。

妊娠初期の赤ちゃんは、自分自身の甲状腺機能がまだ十分に働いていないため、母親の甲状腺ホルモンに大きく依存しています。 特に妊娠初期は、赤ちゃんの脳や神経の発達に甲状腺ホルモンが重要な役割を果たします。

そのため、甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症が十分にコントロールされていない場合には、流産、早産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全などのリスクが高くなることがあります。

妊娠すると甲状腺ホルモンの必要量は増えます

妊娠中は、赤ちゃんの発育や母体の変化に対応するため、甲状腺ホルモンの必要量が増加します。

特に妊娠初期にはhCGというホルモンが増え、TSHが低めに出ることがあります。 その一方で、甲状腺ホルモンの必要量は増えるため、もともと甲状腺の予備力が少ない方では、妊娠をきっかけに甲状腺機能低下症が明らかになることがあります。

妊活を始める前にTSHを確認しましょう

妊娠を希望している方、とくに甲状腺疾患の既往がある方や不妊治療を予定している方では、妊娠前に甲状腺機能を確認しておくことが大切です。

以下に当てはまる方は、妊娠前の甲状腺チェックをおすすめします。

  • ・橋本病と診断されている
  • ・バセドウ病の既往がある
  • ・甲状腺手術を受けたことがある
  • ・放射性ヨウ素治療を受けたことがある
  • ・不妊治療中である
  • ・流産歴がある
  • ・家族に甲状腺疾患がいる
  • ・原因不明の倦怠感、動悸、体重変化がある

基本的には、TSH、FT4、必要に応じてFT3、TPO抗体、Tg抗体、TRAbなどを確認します。

妊娠前TSHの目標値について

甲状腺機能低下症でレボチロキシン(チラーヂンS)を内服している方では、妊娠前からTSHを適切な範囲に調整しておくことが重要です。

2017年のATAガイドラインでは、妊娠を希望する方ではTSH 2.5 mIU/L未満を目標にすることが多くありました。 一方で、近年は「すべての方を一律に厳格管理する」のではなく、甲状腺疾患の有無、抗体の有無、不妊治療の状況、流産歴などを含めて個別に判断する方向になっています。日本においても2025年には甲状腺専門施設の多くでTSH4.0 mIU/L未満を基準とする方針に切り替わっていました。

重要なのは、妊娠してから慌てて確認するのではなく、妊娠前から自分の甲状腺の状態を把握しておくことです。

妊娠中のTSH基準値の考え方

妊娠中は、通常時とは甲状腺ホルモンのバランスが異なります。 そのため、妊娠中のTSHは妊娠週数に応じた基準値で評価することが望ましいとされています。

時期 TSH評価の考え方
妊娠初期 hCGの影響でTSHが低めになることがあります。施設ごとの妊娠週数別基準値が望ましいです。
妊娠中期 妊娠初期よりTSHがやや上昇することがあります。FT4とあわせて評価します。
妊娠後期 母体と胎児の状態を踏まえ、治療中の方では継続的なフォローが必要です。FT4のみ単独低値であることもあり、治療意義については議論の余地があります。

妊娠専用の基準値がない場合には、妊娠初期のTSH上限をおおむね4.0 mIU/L前後として考えます。 ただし、TSHだけで判断せず、FT4、甲状腺自己抗体、症状、妊娠週数を含めた総合判断が必要です。

橋本病があっても妊娠は可能です

「橋本病だから妊娠できないのではないか」と心配される方は少なくありません。 しかし、適切に管理されていれば、多くの方が問題なく妊娠・出産されています。

橋本病で重要なのは、甲状腺ホルモンが不足していないかを確認することです。 甲状腺機能低下症がある場合には、チラーヂンSによる補充療法を行い、TSHを適切に管理します。

妊娠成立後は甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、もともとチラーヂンSを内服している方では、妊娠判明後に内服量の調整が必要になることがあります。

2026年ATAガイドラインで重視された考え方

2026年のATAガイドラインで重要なのは、「軽度の異常を全員治療する」のではなく、「本当に治療が必要な方を見極める」という考え方です。これは2025年に日本甲状腺学会から発信している妊娠中の甲状腺機能管理の手引きに矛盾しません。

甲状腺自己抗体陽性だけでは治療しない方向へ

以前は、TPO抗体が陽性であれば、甲状腺機能が正常でもレボチロキシン投与が検討されることがありました。

しかし近年の研究では、甲状腺機能が正常な方に対して、抗体陽性だけを理由にレボチロキシンを投与しても、流産予防などの効果は明確ではないことが示されています。

そのため、甲状腺機能が正常でTPO抗体のみ陽性の方に対して、 何も考えずにチラーヂンSを投与することは推奨されなくなっています。

潜在性甲状腺機能低下症は個別判断へ

潜在性甲状腺機能低下症とは、FT4は正常であるものの、TSHが高めになっている状態です。

妊娠中や妊活中にこの状態が見つかった場合、以前は比較的積極的に治療されることもありました。 しかし現在は、TSH値だけで機械的に治療を決めるのではなく、以下のような要素を踏まえて判断します。

  • ・TSHの値
  • ・FT4の値
  • ・妊娠週数
  • ・TPO抗体やTg抗体の有無
  • ・流産歴
  • ・不妊治療の有無
  • ・再検査で持続しているか

軽度の異常では一度の採血だけで判断せず、再検査で確認することも大切です。

チラーヂンSを内服中に妊娠したらどうする?

甲状腺機能低下症でチラーヂンSを内服している方は、妊娠が判明したら自己判断で中止せず、できるだけ早く主治医へ連絡してください。

妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、妊娠前と同じ量では不足することがあります。 特に妊娠初期は赤ちゃんの脳や神経の発達に重要な時期であり、早めの調整が大切です。

ポイント: 妊娠がわかった時点で、TSHとFT4を確認し、必要に応じてチラーヂンSの用量を調整します。 自己判断で薬を中止したり、逆に自己判断で増量したりせず、必ず主治医に相談しましょう。

バセドウ病と妊娠

バセドウ病の方も、病状が安定していれば妊娠・出産は十分可能です。

ただし、バセドウ病では妊娠前からの計画的な管理が特に重要です。 妊娠中は、甲状腺ホルモンの値だけでなく、抗甲状腺薬の種類やTRAbの値も確認します。

妊娠前に確認したいこと

  • ・FT4、FT3、TSHが安定しているか
  • ・抗甲状腺薬の種類と量
  • ・TRAbが高くないか
  • ・妊娠初期の薬剤選択をどうするか
  • ・放射性ヨウ素治療後の場合、十分な避妊期間を置いているか

妊娠初期には、抗甲状腺薬の選択が胎児へ影響する可能性があるため、妊娠を希望する段階から専門医へ相談することをおすすめします。

妊娠中に甲状腺結節が見つかった場合

妊娠中に甲状腺結節が見つかることがあります。 多くは良性ですが、超音波検査で悪性が疑われる場合には、妊娠中でも穿刺吸引細胞診を検討することがあります。

甲状腺がんと診断された場合でも、多くの低リスク症例では出産後まで経過観察できることがあります。 一方で、急速に増大する腫瘍やリンパ節転移が疑われる場合などでは、専門的な判断が必要です。

妊娠中に甲状腺のしこりを指摘された場合も、過度に心配しすぎず、甲状腺専門医のもと超音波検査を受けることが大切です。

妊娠中のヨウ素摂取について

甲状腺ホルモンを作るためにはヨウ素が必要です。 しかし、日本人は海藻を食べる習慣があり、もともとヨウ素摂取量が多い傾向があります。

妊娠中だからといって、わかめやのりを完全に禁止する必要はありません。 通常の食事量であれば問題ないことが多いです。

一方で、以下のような摂取はヨウ素過剰につながる可能性があります。

  • ・昆布水を毎日飲む
  • ・昆布サプリメントを使用する
  • ・ヨウ素含有健康食品を継続する
  • ・イソジン®などのうがい薬を長期間・頻回に使用する

特に橋本病やバセドウ病の方では、ヨウ素の過剰摂取により甲状腺機能が変動することがあります。 心配な場合は、自己判断でサプリメントを追加せず、主治医へご相談ください。

産後も甲状腺トラブルに注意しましょう

出産後は免疫状態が大きく変化します。 その結果として、産後甲状腺炎を発症することがあります。

産後甲状腺炎では、最初に甲状腺ホルモンが一時的に多くなる時期があり、その後に甲状腺ホルモンが不足する時期へ移行することがあります。

時期 起こりやすい症状
甲状腺ホルモンが多い時期 動悸、手の震え、不眠、不安感、イライラ、体重減少
甲状腺ホルモンが少ない時期 倦怠感、気力低下、むくみ、寒がり、抑うつ気分、集中力低下

これらの症状は、産後うつや育児疲れと似ていることがあります。 出産後に強い疲労感、気分の落ち込み、動悸、不安感などが続く場合には、甲状腺機能検査を受けることをおすすめします。

ひるま甲状腺クリニック蒲田の妊娠・妊活サポート

ひるま甲状腺クリニック蒲田では、日本甲状腺学会専門医・評議員による甲状腺診療を行っています。

  • ・妊活前の甲状腺チェック
  • ・不妊治療中の甲状腺管理
  • ・橋本病と妊娠管理
  • ・バセドウ病と妊娠管理
  • ・妊娠中の甲状腺機能フォロー
  • ・産後甲状腺炎の診療
  • ・甲状腺結節・甲状腺腫瘍の超音波検査および穿刺吸引細胞診

また、院長は日本母性内科学会認定「母性内科診療プロバイダー」として、妊娠を希望される方から妊娠中・産後の方まで、内科的な視点を含めた専門的な診療を行っています。

妊活中、妊娠中、産後に甲状腺のことで気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

よくあるご質問(FAQ)

妊娠初期のTSHはどのくらいなら正常ですか?

妊娠中は通常時と甲状腺ホルモンのバランスが変化するため、TSHの基準値も異なります。 施設ごとの妊娠週数別基準値を使用することが望ましいですが、妊娠専用の基準値がない場合には、妊娠初期のTSH上限をおおむね4.0 mIU/L前後として考えることがあります。 ただし、TSHだけで判断せず、FT4や甲状腺自己抗体も含めて総合的に評価することが重要です。

橋本病があっても妊娠できますか?

はい、多くの方が問題なく妊娠・出産されています。 ただし、橋本病による甲状腺機能低下症が十分に治療されていない場合には、妊娠しにくさ、流産、妊娠高血圧症候群などのリスクが高くなる可能性があります。 妊娠を希望する場合には、妊娠前からTSHを適切に管理しておくことが大切です。

バセドウ病でも妊娠できますか?

はい、バセドウ病の方も妊娠・出産は十分可能です。 ただし、妊娠前に甲状腺ホルモン値を安定させておくことが重要です。 抗甲状腺薬の種類、甲状腺ホルモン値、TRAbを確認しながら、妊娠を希望する段階から甲状腺専門医と相談しましょう。

不妊治療の前に甲状腺検査は必要ですか?

不妊治療を予定している方では、甲状腺機能の確認が推奨されます。 甲状腺機能低下症や橋本病は、排卵障害、着床率低下、流産率上昇と関連することがあります。 採血のみで評価できるため、妊活開始前に一度確認しておくと安心です。

産後うつと甲状腺は関係がありますか?

関係している場合があります。 出産後には産後甲状腺炎が起こることがあり、動悸、不眠、イライラ、不安感、倦怠感、気力低下、抑うつ気分などが出ることがあります。 産後うつと似た症状になるため、出産後に強い疲労感や気分の落ち込みが続く場合には、甲状腺機能検査を受けることをおすすめします。

妊娠したら甲状腺ホルモンの薬は増やさなければなりませんか?

甲状腺機能低下症でレボチロキシンを内服している方の多くでは、妊娠成立後に必要量が増加します。 妊娠が判明したら自己判断で中止せず、速やかに主治医へ相談してください。

妊娠中に昆布や海藻は食べても大丈夫ですか?

海藻を完全に禁止する必要はありません。 わかめやのりを通常の食事量で摂取することは問題ありません。 一方で、昆布水、昆布サプリメント、ヨウ素含有健康食品などの継続摂取は、ヨウ素過剰につながる可能性があります。

English Summary

Thyroid hormones play an essential role in fertility, pregnancy, and fetal development. The 2026 American Thyroid Association (ATA) guidelines emphasize individualized management of thyroid disease before conception, during pregnancy, and after delivery. Women with Hashimoto’s thyroiditis, Graves’ disease, previous thyroid surgery, or infertility treatment should consider thyroid function testing before pregnancy. If you are pregnant or planning pregnancy and have concerns about thyroid disease, consultation with a thyroid specialist is recommended.

監修者プロフィール

院長
蛭間重典(Shigenori HIRUMA, MD, PhD)

日本甲状腺学会専門医・評議員
東邦大学医療センターや伊藤病院(甲状腺専門病院)で甲状腺専門外来に従事。日本甲状腺学会次世代研究者の会(NexT-JTA)所属。 2025年JR蒲田駅前にひるま甲状腺クリニック蒲田を開業。執筆に『伊藤病院 甲状腺症例を極める(新興医学出版社/2024)』など。 伊藤病院非常勤医師(火曜9-14時外来)、金沢医科大学非常勤講師を兼務。

受賞歴

  • 2023年 日本甲状腺学会
    ロシュ若手奨励賞
    (Young Investigator Award: YIA)
  • 2023年 日本体質医学会
    若手研究奨励賞
  • 2024年 日本抗加齢医学会
    若手研究者賞
  • 2024年 甲状腺病態生理研究会
    研究奨励賞
蛭間重典(Shigenori HIRUMA, MD, PhD)