
子どもは成長の途中にあり、身長や体重、食欲、睡眠、集中力、気分などが日々変化します。学校生活や習い事、思春期、季節の変化などの影響を受けやすく、疲れやすい、元気がない、落ち着きがないといった様子があっても、一時的なものとして見過ごされることがあります。
しかし、こうした変化の背景に甲状腺ホルモンの異常が関係している場合があります。甲状腺ホルモンは、体の代謝を調整するだけでなく、子どもの成長や発達にも関わる大切なホルモンです。いつもと違う様子が続くときは、体からのサインとして受け止めることが大切です。
子どもの甲状腺疾患
甲状腺の病気は大人だけのものではなく、子どもにも起こります。生まれつき甲状腺ホルモンが不足する先天性甲状腺機能低下症のほか、成長してから橋本病、バセドウ病、甲状腺炎、甲状腺の腫れやしこりが見つかることもあります。
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。このホルモンが不足すると体の働きが全体的にゆっくりになり、反対に過剰になると体の代謝が必要以上に高まります。子どもの場合は、身長の伸びや体重、学習面、睡眠、気分、運動時の疲れやすさに影響が出ることがあります。
甲状腺の病気が起こる原因
子どもの甲状腺疾患には、生まれつきの要因と、成長してから起こる要因があります。先天性甲状腺機能低下症では、甲状腺が十分に作られない、正しい位置にない、甲状腺ホルモンを作る仕組みに異常があるといった原因が関係します。
成長してから発症する甲状腺疾患では、自己免疫の異常が関わることがあります。自己免疫とは、本来は体を守る免疫が、自分の甲状腺を攻撃したり刺激したりする状態です。橋本病では甲状腺に慢性的な炎症が起こり、バセドウ病では甲状腺が過剰に刺激されてホルモンが多く作られます。
甲状腺ホルモンが不足するときの症状
甲状腺ホルモンが不足する状態を、「甲状腺機能低下症」といいます。子どもでは、元気がない、眠そうにしている、寒がりになる、便秘が続く、皮膚が乾燥する、顔がむくむ、体重が増えやすい、動きがゆっくりになるといった変化がみられることがあります。
学習面では、集中しにくい、反応が遅い、以前より意欲が落ちたように見えることもあります。成長期では、身長の伸びが悪くなることも重要なサインです。成長曲線をみて、身長の伸びが急に緩やかになった場合は、甲状腺ホルモンの状態を確認するきっかけになります。
甲状腺ホルモンが過剰なときの症状
甲状腺ホルモンが多くなりすぎる状態を、「甲状腺機能亢進症」といいます。子どもでは、動悸がする、汗をかきやすい、暑がる、手が震える、食べているのに体重が減る、疲れやすい、眠りが浅い、落ち着きがない、イライラしやすいといった症状がみられることがあります。
代表的な病気にバセドウ病があります。学校生活では、授業に集中できない、そわそわする、成績が急に落ちるなどの変化として気づかれることもあります。性格や生活態度の問題と判断せず、体の変化もあわせて確認することが大切です
成長・学習・体調の変化に注意
甲状腺の病気は、首の腫れや痛みだけで気づくとは限りません。身長の伸びが鈍い、疲れやすい、授業に集中できない、運動を嫌がる、朝起きにくい、便秘や下痢が続く、体重が急に増えたり減ったりしたといった変化が、甲状腺の異常と関係していることがあります。
思春期には、眠気、だるさ、イライラ、体重変化、月経の乱れ、集中力の低下などが起こりやすく、甲状腺疾患の症状と重なって見えることがあります。変化が長く続く場合や、学校生活、運動、家庭での様子に影響が出ている場合は、検査を検討することが大切です。
検査では何を確認するのか
甲状腺の病気が疑われる場合は、問診、診察、血液検査、必要に応じて超音波検査を行います。問診では、体重変化、身長の伸び、食欲、便通、睡眠、汗の量、寒がりや暑がり、動悸、手の震え、学校生活の変化、家族に甲状腺疾患があるかなどを確認します。
血液検査では、主にTSH、FT4、FT3を調べます。TSHは脳下垂体から分泌され、甲状腺にホルモンを作るよう働きかけるホルモンです。甲状腺ホルモンが不足するとTSHが高くなり、過剰になるとTSHが低くなる傾向があります。橋本病やバセドウ病が疑われる場合は、自己抗体の検査も行います。
早めに相談したいケース
受診を考えたいのは、症状が続いている場合、成長曲線に沿わず身長の伸びが鈍っている場合、体重が理由なく大きく変化した場合、動悸や手の震えがある場合、首の腫れに気づいた場合、学習や生活への影響が出ている場合です。子どもは体調を言葉でうまく説明できないこともあるため、保護者が日常の変化を記録しておくと診療に役立ちます。
治療は、原因とホルモンの状態によって異なります。甲状腺ホルモンが不足している場合は、必要に応じて甲状腺ホルモン薬で補います。バセドウ病などでホルモンが過剰な場合は、抗甲状腺薬を中心に治療を検討します。子どもの甲状腺疾患は、成長や発達、学校生活に関わるため、早めに状態を確認することが大切です。





