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妊娠と甲状腺の関係とは?潜在性甲状腺機能低下症

妊娠と甲状腺の関係とは?潜在性甲状腺機能低下症|ひるま甲状腺クリニック 蒲田|東京都内、大田区蒲田駅の甲状腺専門診療|ひるま甲状腺クリニック蒲田

妊娠は女性の身体に大きな変化をもたらします。その変化の中でも見落とされやすいのが、甲状腺機能の異常です。甲状腺は代謝や体温、ホルモンバランスに関わる大切な臓器で、妊娠中はその働きが普段とは異なる状態になります。とくに「潜在性甲状腺機能低下症」は自覚症状に気づかないまま経過するケースも少なくありません。

しかし、この状態は母体だけでなく胎児の発育にも影響を与える可能性があります。適切に理解し、必要な検査や管理を行うことでリスクを抑えることが可能です。

甲状腺と妊娠の関係

甲状腺は首の前側にあり、甲状腺ホルモンを分泌することで全身の代謝を調整しています。このホルモンはエネルギー消費や体温維持だけでなく、神経系や心血管系の働きにも関与しており、生命活動を維持するうえで欠かせない存在です。妊娠中は母体の代謝が高まるため、通常よりも多くの甲状腺ホルモンが必要になります。

また、胎児は妊娠初期において自ら十分な甲状腺ホルモンを産生できません。そのため、母体のホルモンに依存して発育が進みます。この時期に母体の甲状腺機能が低下していると、胎児の神経発達や成長に影響が出る可能性があります。

潜在性甲状腺機能低下症とは?

潜在性甲状腺機能低下症とは、血液検査において甲状腺刺激ホルモンが上昇している一方で、甲状腺ホルモン自体は正常範囲にある状態を指します。

明らかな機能低下症とは異なり、症状がほとんど現れないため見過ごされやすい特徴があります。

この状態は「まだ表面化していない甲状腺機能低下」と捉えられ、放っておくと甲状腺機能低下症へと進行する可能性があります。特に妊娠中はホルモン環境が大きく変化するため、異常が出やすい時期でもあります。症状がないから問題ないとは言えず、検査による診断が重要となります。

妊娠中に起こる甲状腺機能の変化

妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響で甲状腺の働きが変化します。ヒト絨毛性ゴナドトロピンというホルモンは甲状腺を刺激する働きがあり、妊娠初期には一時的に甲状腺ホルモンが増加する傾向があります。この変化に伴い、甲状腺刺激ホルモンの値は低下することがあります。

さらに、妊娠中はヨウ素の必要量も増加します。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料であり、不足するとホルモン合成が十分に行われません。日本では通常の食生活でヨウ素不足になることは少ないものの、食事制限や偏りがある場合には注意が必要です。様々な原因が重なり、妊娠中は甲状腺機能のバランスが崩れやすい状態になります。

潜在性甲状腺機能低下症が妊娠に与える影響

潜在性甲状腺機能低下症は軽度の異常ですが、妊娠においては無視できない影響を及ぼす可能性があります。母体側では流産や早産のリスクが高まるとされており、妊娠に影響を与えることの一つとして注目を集めています。。

胎児に対しても、発育や神経発達への影響が注目されています。特に妊娠初期は母体の甲状腺ホルモンに依存しているため、この時期のホルモン不足は重要な意味を持ちます。隠れている異常であっても、妊娠という状況では注意して生活しないといけません。

診断方法と基準

潜在性甲状腺機能低下症の診断は血液検査によって行われます。測定されるのは甲状腺刺激ホルモンと遊離型甲状腺ホルモンで、このバランスによって状態が判断されます。甲状腺刺激ホルモンが基準値を超えている一方で、遊離型ホルモンが正常範囲内にある場合に潜在性甲状腺機能低下症と診断されます。

妊娠中は通常とは異なる基準値が用いられることがあります。妊娠週数によって適切な範囲が変わるため、一般的な基準ではなく妊娠用の基準で判断することが大切です。また、抗甲状腺抗体の有無も関係することがあり、これにより将来的なリスクや治療が検討されます。

治療と管理の考え方

潜在性甲状腺機能低下症の治療は、すべての症例で必要になるわけではありません。ただし、妊娠中または妊娠を希望する場合には、積極的に治療が検討されることがあります。一般的には甲状腺ホルモン製剤を使って不足分を補う方法が取られます。

治療の目的は、甲状腺刺激ホルモンの値を適切な範囲に保つことです。過剰な補充は逆に甲状腺機能亢進状態を招くため、定期的な血液検査による調整が必要です。妊娠中はホルモン需要が変化するため、用量の見直しが必要になるケースもあります。

妊娠前からのチェックの重要性

潜在性甲状腺機能低下症は無症状であることが多いため、妊娠前の段階で気づかれていない場合があります。しかし、妊娠初期は胎児への影響が大きい時期であり、この段階でのホルモン状態が重要です。そのため、妊娠を計画している段階で検査が行われることもあります。

特に不妊治療を受けている方や、過去に流産を経験している方、自己免疫疾患を持つ方では、甲状腺機能の検査が重要とされています。早期に異常を把握し、必要に応じて治療を開始することで、妊娠期間を安定に過ごせるようになります。

日常生活で気をつけるポイント

潜在性甲状腺機能低下症の管理においては、医療的な対応だけでなく日常生活も重要な要素となります。バランスの取れた食事を心がけ、必要な栄養素を適切に摂取することが大切です。ヨウ素の摂取は過不足がないよう意識する必要があります。

また、過度なストレスや睡眠不足はホルモンバランスに影響を与える可能性があります。規則正しい生活をし、体調の変化に注意をすることが大切です。体調に違和感を覚えた場合には、早めに医療機関を受診する姿勢が重要です。

監修者プロフィール

院長
蛭間重典(Shigenori HIRUMA, MD, PhD)

日本甲状腺学会専門医・評議員
東邦大学医療センターや伊藤病院(甲状腺専門病院)で甲状腺専門外来に従事。日本甲状腺学会次世代研究者の会(NexT-JTA)所属。 2025年JR蒲田駅前にひるま甲状腺クリニック蒲田を開業。執筆に『伊藤病院 甲状腺症例を極める(新興医学出版社/2024)』など。 伊藤病院非常勤医師(火曜9-14時外来)、金沢医科大学非常勤講師を兼務。

受賞歴

  • 2023年 日本甲状腺学会
    ロシュ若手奨励賞
    (Young Investigator Award: YIA)
  • 2023年 日本体質医学会
    若手研究奨励賞
  • 2024年 日本抗加齢医学会
    若手研究者賞
  • 2024年 甲状腺病態生理研究会
    研究奨励賞
蛭間重典(Shigenori HIRUMA, MD, PhD)