高血圧予防に「代替塩」を──WHO最新ガイドラインと実践方法を徹底解説|ひるま甲状腺クリニック 蒲田|東京都内、大田区蒲田駅の甲状腺専門診療|ひるま甲状腺クリニック蒲田

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高血圧予防に「代替塩」を──WHO最新ガイドラインと実践方法を徹底解説

高血圧予防に「代替塩」を──WHO最新ガイドラインと実践方法を徹底解説|ひるま甲状腺クリニック 蒲田|東京都内、大田区蒲田駅の甲状腺専門診療|ひるま甲状腺クリニック蒲田

こんにちは。ひるま甲状腺クリニック蒲田、院長の蛭間重典です。

これまで甲状腺疾患に特化して診療・研究を行ってきましたが、個人的には老化やアンチエイジングにも強い関心を持ち、日々学びを続けています。

そんな中、昨日読んだ『The Lancet Public Health』誌に、高血圧と食塩摂取に関する非常に興味深い報告がありました。特に「塩の選び方」によって血圧や心血管疾患のリスクを大きく変えられるという点は、多くの方にとって知っておくべき内容だと感じました。

この記事では、世界保健機関(WHO)が発表した最新のガイドラインに基づき、「代替塩(塩化ナトリウム+塩化カリウム)」を中心とした、実践的な食生活改善の方法について解説します。


1. 塩分と高血圧──日本人にとっての重大な課題

高血圧は、日本で最も多い生活習慣病の一つです。厚生労働省の調査では、成人の約43%が高血圧またはその予備軍に該当するとされ、多くの方が自覚のないまま、脳卒中や心筋梗塞のリスクを抱えています。

特に問題となるのが「塩分のとりすぎ」です。日本の食文化は、味噌・醤油・漬物・ラーメンなど、塩分の多い食品が多く、平均的な食塩摂取量は1日あたり10〜11gと、WHOの推奨値(5g未満)の2倍にも達します。


2. なぜ塩分が血圧を上げるのか?

塩に含まれるナトリウムは、体内の水分バランスや血圧を調整する重要なミネラルですが、過剰摂取により血管内の水分量が増え、血圧を上昇させます。その結果、動脈硬化が進行し、心血管疾患のリスクが高まります。

一方、カリウムには余分なナトリウムを体外に排出する働きがあり、血圧を下げる効果が知られています。つまり、ナトリウムとカリウムのバランスが、高血圧予防のカギを握っているのです。


3. WHOが推奨する「代替塩」とは?

2025年1月、WHOは通常の食塩(塩化ナトリウム)の一部を塩化カリウムに置き換えた「低ナトリウム塩(代替塩)」の使用を推奨する新たなガイドラインを発表しました。これは、世界中の心血管病による死亡を減らすための重要な施策のひとつとされています。

WHOは、食塩を代替塩に切り替えることで、年間数百万人の命が救われる可能性があると報告しています。


4. 科学的根拠──代替塩の臨床試験

2021年、中国で行われた「Salt Substitute and Stroke Study(SSaSS)」では、約21,000人の高血圧患者を対象に、通常の塩と代替塩の影響を比較する大規模な試験が実施されました。

その結果、代替塩を使用したグループでは:

  • 脳卒中の発症率が14%低下

  • 心血管死が13%減少

  • 全死亡率が12%低下

といった明確な改善効果が認められ、『New England Journal of Medicine』にも掲載されました。

参考文献:


5. 注意点──すべての人に安全とは限らない

代替塩に含まれるカリウムは、腎機能が低下している方や特定の薬(ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンなど)を服用中の方にとっては、高カリウム血症のリスクがあります。

吐き気や筋力低下、不整脈といった症状が出ることがあるため、代替塩の使用に際しては、医師と相談のうえで血液検査などを行うことが推奨されます。


6. 日本における代替塩の現状

日本では、味の素の「やさしお」や、ミヨシ油脂の「減塩塩」などが市販されており、塩化カリウムを30〜50%程度含んだ製品が流通しています。味についても改良が進み、従来の塩とほとんど変わらない品質に達しているものも多くあります。

それにもかかわらず、国内での普及率はまだ低く、主な理由として以下の点が挙げられます。

  • 一般の塩よりも価格が高い

  • カリウムについての知識が乏しい

  • 医療機関からの紹介や指導が不足している


7. 医療機関と食品業界への提案

医療現場では、単に「減塩しましょう」と指導するだけでなく、代替塩といった具体的な選択肢を提示することが重要です。管理栄養士や薬剤師と連携し、代替塩の利点や使い方を指導することで、より実効性の高い生活改善が期待できます。

また、食品業界も加工食品への代替塩の導入を拡大することが望まれます。WHOは業界への明確な推奨を行っており、公衆衛生の観点からも積極的な対応が求められます。


8. 日本人のナトリウム摂取量──国際比較から見る現状

2023年に発表された国際比較調査によれば、各国の1日あたりのナトリウム摂取量(食塩換算)は以下の通りです。

  • 日本:10.1g

  • 中国:11.2g

  • アメリカ:8.5g

  • フィンランド:7.0g

  • WHO推奨値:5.0g未満

このように、日本は依然として「塩分大国」と言えます。一方、フィンランドでは、政府が主導して食品ラベルの表示を徹底し、低ナトリウム食品の普及を推進した結果、心血管疾患による死亡率を大きく低下させたという成功事例があります。


9. 高血圧がもたらす全身への影響

高血圧は、「血圧が高い」だけでなく、次のような全身の病態に影響します。

  • 心臓:左心肥大、心不全、心筋梗塞

  • 脳:脳出血、脳梗塞、認知症のリスク上昇

  • 腎臓:慢性腎臓病、最終的には透析が必要に

  • 眼:網膜出血、視力低下

これらのリスクを未然に防ぐためにも、日々の塩分摂取を見直すことは非常に重要です。


10. 読者の皆様へ:あなたの塩分チェック

まずは、あなた自身の食生活を振り返ってみましょう。以下の項目にどれだけ当てはまるかをチェックしてください。

  • 毎日味噌汁を飲む

  • 漬物や梅干しをよく食べる

  • 外食(ラーメン・丼もの)を週3回以上している

  • ハム・ソーセージ・インスタント食品を頻繁に摂る

  • 血圧が高め、または指摘されたことがある

2つ以上該当した方は、食塩摂取量が多い可能性が高く、代替塩の導入を真剣に検討してみる価値があります。


11. 家庭での工夫とレシピ例

「塩を減らすと物足りない」と感じる方も多いかもしれませんが、ちょっとした工夫で美味しさは保てます。

  • 酢、柚子、レモンなどの酸味を活用して風味にアクセントを

  • 昆布・鰹節・椎茸などでしっかり出汁を取る

  • 胡椒、生姜、にんにくなど香りのあるスパイスを加える

  • 味噌汁は具だくさんにして、汁の量を減らす

院長おすすめのレシピ例:

「チキンのレモンソテー」

鶏もも肉1枚の皮面に代替塩をひとつまみ分まぶす

皮面を下にして中火で10分焼く

ローズマリー2枝程度を乗せて胡椒をかけ、裏返して2-3分焼く

お皿に取り分けて上からレモンを絞ったら完成!

個人的にはローズマリーもカリカリになるまで焼いて葉先を食べるのが好きです。


12. 代替塩導入ガイド:今日からできる4ステップ

STEP 1:塩をまるごと置き換える

→ 調味料入れに代替塩を入れて、普段使いに。

STEP 2:使いすぎ防止の工夫を

→ 計量スプーンで使用量を管理。「小さじ1以下」が目安。

STEP 3:加工食品の選び方を見直す

→ カップ麺やレトルト食品は減塩表示のあるものを選ぶ。

STEP 4:家庭内で合意を形成

→ 家族と一緒に減塩に取り組むことで、長く継続できます。


13. 家庭内で意識改革を進めるには

家族の協力は、食習慣の改善を継続するうえで非常に重要です。次のような工夫を取り入れてみましょう。

  • 毎週「減塩チャレンジデー」を設けて、代替塩レシピに挑戦

  • 家族に高血圧リスクの資料をシェアして意識づけ

  • 食卓に塩を置かず、調理時のみ使用する習慣に

特に食事の主導権を持つ方の理解と協力が鍵になります。


14. 終わりに:食卓の変化が未来を変える

高血圧は治療よりも予防が重要です。そしてその第一歩は、日々の食卓から始まります。

代替塩の導入は、「我慢の減塩」ではなく、「工夫の減塩」へと考え方を変えるきっかけになります。

これからも、当院では最新のエビデンスとガイドラインに基づき、信頼できる情報をお届けしてまいります。

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ひるま甲状腺クリニック蒲田
院長:蛭間重典(日本甲状腺学会専門医/次世代研究者の会NexT-JTAメンバー)


JR蒲田駅 徒歩2分|甲状腺専門クリニック|予約優先制

よくある質問(FAQ)まとめ

代替塩はどこで買えますか?

スーパーマーケットやドラッグストア、ネット通販で簡単に購入可能です。

腎臓が健康なら安心して使えますか?

基本的には安全ですが、健康診断などで腎機能を確認し、異常がないことを確かめてから使用を開始すると安心です。

どれくらいの量を使えばいい?

通常の塩と同様の感覚で使用可能です。ただし、食塩全体の摂取量は1日6g以下を目指しましょう。

代替塩ってまずいんでしょ?

初めは少し苦みを感じる方もいますが、使い方次第で味の違いは気にならなくなります。多くの製品は風味の工夫がされており、慣れれば通常の塩との差はほとんどありません。

高くて続かないのでは?

確かに通常の塩より高価ですが、1回の使用量は微量で済みます。1袋で数ヶ月もつケースが多く、コストパフォーマンスは悪くありません。

不自然な加工品では?

塩化カリウムは自然界にも存在する成分であり、食品添加物としての安全性も確認されています。WHOや多くの国のガイドラインでも推奨されています。

毎日代替塩にしたら、血圧はどのくらい下がりますか?

個人差はありますが、国際的な研究では平均して収縮期血圧が約5mmHg低下したとの報告があります。これは薬1種類分の効果に匹敵します。

子どもや妊婦にも使えますか?

基本的には問題ありませんが、過剰摂取は避けるべきです。特に妊婦の方は主治医と相談のうえでご使用ください。

代替塩にしただけで健康になりますか?

重要なのは「塩全体の摂取量を減らすこと」です。代替塩はその手段のひとつであり、バランスの取れた食生活全体が健康に直結します。