【最新2025年版】分化型甲状腺がん診療ガイドライン改訂のポイントと当院での治療の流れ|ひるま甲状腺クリニック 蒲田|東京都内、大田区蒲田駅の甲状腺専門診療|ひるま甲状腺クリニック蒲田

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【最新2025年版】分化型甲状腺がん診療ガイドライン改訂のポイントと当院での治療の流れ

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細胞診

分化型甲状腺がんの新しい国際ガイドラインについて
―患者さまに知っていただきたいポイント―

米国甲状腺学会(ATA)が2025年に公表した成人分化型甲状腺がんの診療ガイドラインは、治療の「効き目」だけでなく「生活の質(QOL)」まで重視する内容へと進化しました。本記事では、専門的な部分をなるべく省き、患者さまに役立つ要点をやさしく解説します。あわせて、当院での腫瘍精査の流れと、米国と日本の違いに関する大切な注意点にも触れます。

はじめに

甲状腺がんは、ほかのがんに比べて進行がゆっくりで予後の良いがんとして知られています。分化型甲状腺がん(乳頭がん・濾胞がん)は全体の9割以上を占め、治療選択肢が豊富です。最新の国際ガイドラインは「すべての患者さんに同じ治療」ではなく、それぞれの病状や生活背景に合わせて最適な治療強度を選ぶ流れをさらに明確にしました。

ガイドライン改訂の背景

米国甲状腺学会(ATA)の分化型甲状腺がんガイドラインは、過去の改訂を経て、診断・手術・追加治療・フォローアップまでを一貫して整理する構造へ発展してきました。2025年版では、最新エビデンスの反映に加え、患者さんの生活の質(QOL)必要最小限の医療(過不足のない医療)がより重視されています。

今回のガイドラインで強調されていること

小さながんに対する「経過観察」という選択肢

直ちに手術を行わず、定期的な超音波などで見守る「アクティブサーベイランス(AS)」が、小さながん(とくに1cm以下の乳頭がん)では選択肢として広く認められています。長期研究では、一定の条件を満たせば、増大や転移のリスクは低く、必要になった時点で手術を行っても予後は良好という結果が蓄積しています。

ASは「放置」ではありません。計画的に検査を行い、安全域を確かめ続ける能動的な管理です。腫瘍の位置や周囲の臓器との関係、患者さまの年齢・合併症・ご希望を踏まえて総合的に判断します。

手術は「必要最小限」に

がんが小さく、甲状腺の中にとどまっている場合は、甲状腺の片側のみを切除する「葉切除」が基本的な選択肢になります。従来よりも全摘手術を避けられるケースが増えたことで、術後のホルモン補充の負担や合併症リスクの低減が期待できます。

一方で、腫瘍が大きい、周囲へ広がっている、リンパ節・遠隔転移があるなどの高リスク例では、適切な範囲の手術をしっかり行うことが重要です。つまり、病状に応じて「やるべきことはきちんと、やり過ぎは避ける」という考え方です。

放射性ヨウ素(RAI)治療の対象がより限定的に

手術後に行う放射性ヨウ素(RAI)治療は、低リスクの多くでは原則として不要、中間リスクでは状況に応じて選択、高リスクや遠隔転移を伴う場合には推奨される、という整理が明確になりました。つまり「しない勇気」が標準化したと言えます。

これは、過剰な治療を避けつつ再発リスクを適切に抑えるという国際的な流れに沿うものです。

TSH抑制治療の見直し

甲状腺ホルモン薬でTSH(甲状腺刺激ホルモン)を強く抑える治療は、再発予防に寄与しますが、骨粗鬆症や心臓への負担といった副作用が問題になります。最新方針では、低リスクの患者さまで「必要以上に強い抑制」を避けることが推奨され、年齢・骨密度・心血管リスクを踏まえて最適な目標値に調整します。

血液検査と超音波での経過観察

治療後のフォローは、サイログロブリン(Tg)と抗Tg抗体の血液検査、そして頸部超音波が中心です。ガイドラインは、不必要な検査や短すぎる間隔(半年以内)での検査を避けるよう提案しています。

 

再発・進行に対する分子標的薬の進歩

再発・進行でRAIが効きにくい場合には、分子標的薬(レンバチニブ、カボザンチニブ、RET/NTRK融合遺伝子に適応する薬など)が重要な選択肢になります。近年は腫瘍の遺伝子プロファイルに応じた精密な治療が現実的になってきました。

当院での腫瘍精査の流れ

当院では、甲状腺腫瘍が疑われる患者さまに対し、初診当日の判断力と細胞診までのスピードを重視しています。以下が基本の流れです。

  1. 初診当日:血液検査甲状腺超音波検査を行い、穿刺吸引細胞診:FNAの必要性を総合的に判断します。当日中に結果説明を行い、必要と判断すれば細胞診の予約を取ります。
  2. 細胞診実施日:通常診療と重ならないように当院の昼休みの時間帯を利用して実施します。
  3. 結果説明:細胞診の実施から約1週間後に結果をご説明します。
    陰性(悪性の所見なし):当院で半年後を目安に経過観察。
    悪性所見あり:当院で作成したプレパラート標本(病理検体)の貸し出しを行い、患者さまのご希望を伺ったうえで連携病院へ紹介します。
  4. 主な紹介先(例):
    • 伊藤病院(毎週火曜日に院長・副院長が勤務)
    • 東邦大学医療センター大森病院(当院から近接)
    • 日本医科大学附属病院(内視鏡手術をご希望の場合)
    • その他、お住まいに応じて東京医科大学病院国際医療福祉大学三田病院等をご案内することがあります。

日本と米国の違いについて(注意事項)

本記事で取り上げたのはあくまで米国のガイドラインです。医療保険制度や人種・遺伝的背景、医療提供体制の違いにより、日本の診療現場にそのまま適用できるとは限りません。日本には「甲状腺癌取扱い規約」という国内の診療指針があり、国際的な動向(米国ガイドライン)を参考に改訂されることもあります。日本での標準的な診療方針は、国内規約の更新を待って判断することが大切です。

当院では、国際的なエビデンスを踏まえつつも、日本の規約・保険制度・患者さま個別の事情に即した最適な医療をご提案します。

まとめ

  • 最新ガイドラインは、過不足のない医療とQOL重視をより明確にしました。
  • 小さながんでの経過観察手術の縮小RAIの選択的適用TSH抑制の最適化がポイントです。
  • 進行・再発例では、遺伝子変化に応じた分子標的薬が治療選択肢となります。
  • 日本では国内規約(甲状腺癌取扱い規約)と保険制度の下で判断します。当院は患者さま一人ひとりに最適化した方針をご提案します。

気になるしこりや検査のご相談は、お気軽に当院へお尋ねください。

参考資料

  • American Thyroid Association (2025). Management Guidelines for Adult Patients with Differentiated Thyroid Cancer. Thyroid

※学術資料は専門家向けの内容を含みます。個別の診療判断は、検査結果・画像所見・既往歴・ご希望等を踏まえて総合的に行います。

ひるま甲状腺クリニック蒲田
院長:蛭間重典(日本甲状腺学会専門医/次世代研究者の会NexT-JTAメンバー)


JR蒲田駅 徒歩2分|甲状腺専門クリニック|予約優先制

よくあるご質問(FAQ)

A. 1cm以下の小さながん(特に乳頭がん)では、条件を満たせば「アクティブサーベイランス(定期的な超音波検査で見守る方法)」も選択肢です。急いで大きな手術をしないことで、生活の質を保ちながら安全に経過をみられる場合があります。

A. 腫瘍が大きい、周囲へ広がっている、リンパ節や遠隔転移がある場合などは手術が推奨されます。小型で甲状腺内にとどまる場合は、片側だけを取る「葉切除」が選ばれます。

A. 低リスクの多くではRAIは原則不要です。中間リスクでは状況に応じて判断し、高リスクや遠隔転移がある場合に推奨されます。過不足のない治療を選ぶ考え方が重視されています。

A. 強い抑制は再発予防に役立つ一方、骨粗鬆症や心臓への負担が増えます。低リスクでは「必要以上に抑えすぎない」方針が一般的で、年齢・骨密度・心血管リスクに合わせて目標値を調整します。

A. 採血で使うものと同じくらい細い針で短時間に行う検査で、多くの方は強い痛みを訴えません。当院では初診当日に採血・超音波を行い、細胞診が必要かどうかを医師が判断します。必要であれば予約のうえ施行し、通常細胞診を実施した1週間後に病理結果をご説明します。

A. 当院はプレパラート標本の貸し出しに対応し、ご希望の病院へ紹介します。院長副院長が勤務している伊藤病院、当院から近い東邦大学医療センター大森病院、内視鏡手術をご希望の場合の日本医科大学附属病院、ほかお住まいに応じて東京医科大学病院・国際医療福祉大学三田病院などをご案内します。

A. 医療保険制度や人種・医療提供体制が異なるため、そのまま当てはまるとは限りません。日本では「甲状腺癌取扱い規約」に基づいて方針が決まります。国際的な流れを参考にしつつ、国内規約の改訂を待って最適な診療を選びます。

A. 定期受診と超音波・血液検査を守ることが大切です。しこりの自覚的な変化、声のかすれ、首の圧迫感など新しい症状があれば、予定より早く受診してください。

A. 多くの方は治療後に通常の生活へ戻れます。妊娠希望の場合は、治療内容やタイミングを個別に調整しますので、遠慮なくご相談ください。

A. 初診当日に採血・超音波で方針の目安が立ち、細胞診を行う場合は後日の予約をとります。細胞診実施後は通常1週間ほどで結果説明です。陰性なら半年後に当院で経過観察、悪性を疑う場合は連携病院へ迅速にご紹介します。